「鷺とり」 連載「落語ときもの」(5)
2009-01-09
落語で描かれる世界には、冷静に考えると、「ンな、あほな」
という登場人物やストーリーの展開がありますが、
実際に演じられるのを見聞きすると、
不思議とリアリティーがあって、
だからこそ大笑いしてしまいます。
そのあたりが「芸の力」なんでしょうか。
そうした「ンな、あほな」噺の一つが、
「鷺とり」
登場人物の男、雀を捕まえるのに、
こぼれ梅(味醂のしぼりかす)と南京豆を使うとか、
腕に色を塗りたくって梅ノ木に見立て、
そこにとまったウグイスを手づかみに、とか。
当然ながら全部失敗して、お金を無駄にしたり、怪我をしたり。
それでも次に、挑むのが「鷺とり」であります。
「鷺がたくさんやってくる」と教えられて出かけたお寺。
夜ということで、池にびっしりと鷺が眠っている。
鷺の首をつかんだところが、入れ物がないので、
帯の間にはさむという、とっさの気転。
次から次へ帯の間にはさんでいったのはいいものの、
やがて目を覚ました鷺たちが、そのままいっせいに羽ばたいて、
ついにこの男、鷺と一緒に空を飛んで天王寺さんへ……
全編これ、「ンな、あほな」のオンパレード。
それでいて、私なんかはこの噺を聞くと胸が「スッ」とします。
連載「落語ときもの」(4) 池田の猪買い 又は重ね着
2008-12-28
ちょっと手付かずだった連載「落語ときもの」。以前次回予告で「鷺とり」としていましたが、
先に「池田の猪買い」を。
体が冷えてどうしようもないという男が、
「冷え気」には猪の肉が効くと甚兵衛さんに教えてもらい、
大坂の街中から池田まで猪を求めにいくというお話。
池田へ向かうという朝、甚兵衛さんのところにやってきます。
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「代書」 連載「落語ときもの」(3)
2008-11-24
1999年に亡くなった桂枝雀さん。その生前、私が生の高座に接することができたのは、
数回だけでした。
亡くなられた当時、あまりのニュースに、
現実感もありませんでした。
今は、ビデオやDVD、本でしか接することはできませんが、
本を読むとき、「ああ、枝雀さんに逢いに行ける」と思って、
ページをめくっています。
その中で、大ヒット作の一つ、
「代書」
「主人公」の松本留五郎さん、
近所の町工場へ夜警に行くということで、「履歴書」を書いてもらいに、
「代書屋」はん(司法書士、行政書士)のところへ出掛けまして、
代「いや、違います。生年月日言うてもらいますねん」
留「(うれしそうに)…『セーネンガッピ』」
代「いやいや、あの、いや、『生年月日』、と言うてもらうのとちゃう。
生年月日を言うてもらいまんねん」
留「……(大声で)セーネンガッピ、ヲ!」
ちくま文庫の『桂枝雀爆笑コレクション 4 萬事気嫌よく』(2006年)を、
電車の中で読んでいまして、
上の部分で、こらえきれず、
「アハハ」と声を出して笑ってしまった私であります。
「蔵丁稚」 連載「落語ときもの」(2)
2008-11-18
随時連載の第2回目は、 「蔵丁稚」 です。大坂は船場の丁稚の定吉、これが芝居好きでして、
お店の御用の途中に、芝居町の道頓堀で油を売り、
「忠臣蔵(仮名手本忠臣蔵)」を見物してきたことが露見。
お叱りを受けて、「おしおき」ということで、
蔵の中に押し込められてしまいます。
空腹と退屈しのぎに蔵の中で芝居の真似事。
「仮名手本忠臣蔵」の四段目、いわゆる「判官切腹の場」を、
自分で演じていきます。
それを見た下女が、あわてて、
「定吉とんが、蔵の中で切腹!」と旦那に御注進…
落語と歌舞伎がリンクした、典型的な「芝居噺」ですが、
ここにも、芝居の中の武士の世界の「きもの」が描かれています。
新・随時連載「落語ときもの」(1)
2008-11-12
私、歌舞伎もブルースも好きですが、落語も好きなんです。忙しくて、自由になる時間は、はもにかに費やしているので、
しょっちゅう落語会に出掛けるというわけではなく、
もっぱら今は、落語全集など活字で楽しむのが主ですが、
そういう「落語ファン」もいるということで。
通勤電車の中で枝雀さんのを読んで、ニタニタしたり、
どうしようもなく、枝雀さんの姿が浮かんで、
涙が出そうになったりして、
傍目には、きっと「変なオッサン」でしょう。
ぼちぼち「きもの暮らし」をするようになって、
「高座着」としてきものを着ている噺家さんのこともさることながら、
噺の中に登場するきものに意識が傾いて、
落語の新たな楽しみ方が増えています。
というわけで、随時連載で、
私が感じた範囲で、「落語ときもの」について、
好き勝手なことを書いてみたいと思います。
京都生まれ育ち、大阪働き暮らし、
という根っからの関西人なので、上方落語が中心ですが、
どうぞお付き合いを。
さてその第1回目。
最も鮮やかな形で「きもの」が出てくる噺の一つは、
大ネタ、
「百年目」
ではないかしらと思います。


