「宿替え」 連載「落語ときもの」(6)
2009-02-27
ことしが没後10年になる、故・桂枝雀師匠のもので、大好きな噺はいろいろあります。
「代書」「八五郎坊主」…
その一つが、
「宿替え」
亡くなられた後のNHKの追悼番組のメインも、「宿替え」でした。
長屋のおやっさん、きょうが宿替え(引越し)当日とて、
奥さん相手に、荷造りのあれこれ。
大風呂敷を広げて、転居先に持っていく荷物を積んでいきますが、
仕上げに風呂敷を結んで荷崩れしないように、
細帯をかけて、さあ持ち上げるという段になって、
「なぜ持ち上がらない?」
というのは、細帯を、畳を外した下の敷居も一緒にかけてしまって…
やっとのことで、引越し先に着いたおやっさん、
奥さんに頼まれ、ほうきを掛けるために釘を打つのですが、
ごじゃごじゃ喋りながら仕事をするうちに、
釘をば打ち込んでしまった。
女「どんな釘打ちなはってん」
亭「八寸の瓦釘や」 ※八寸=約30・3センチであります。
女「ようそんなもんが柱へ立ったしな」
亭「柱と違うねん。横手の壁へ打ってしもた」
女「アホや、この人。お長屋の壁ちゅうたらあーた、
うーすいもんだっせー。お隣、先が出てて、怪我でもしはるか、
着物でも引っかけはったらどないすんねん。
早いこと行ってこたえといなはれ」
(『桂枝雀爆笑コレクション3 けったいなやっちゃな』 ちくま文庫)
きもの暮らしをするようになって、
「宿替え」の、ここのやりとりが、それこそ「ひっかかる」ようになりました。
釘こそ出ていませんが、
現代の、マンションなどの建築様式は、
きもの暮らしを前提にしていないので、
いろいろ「危険」がつきものであります。
その最たるものが、これ。

ドアノブであります。
家ン中を、きものでうろうろしているとき、
慣れないうちは、袖口を引っかけて、
「ビリッ!!」
と、やってしまったことが…
私は、去年のいまごろ、ウールの家着で家の中を動いているときに、
右袖を、見事にやってしまいました。
そのことを妻に正直に告白
私「やってしまいました」
妻「何がですか?」
私「袖、ビリッ!!!、ですわ」
妻「はあ」
私「右袖です。えらい、情けない。もう、二度とせんとこ、思いますわ」
それ以来、注意して同じ過ちは……
私「繰り返しません」
妻「右袖だけですか」
私「はあ、はず恥ずかしいことですわ」
妻「私、家で着る、あのウールの縞ですけど」
私「はあ」
妻「右袖、左袖、両方、ビリッ!!とやってしまいましたよ」
