「勧進帳」雑談~歌舞伎と文楽

 2016-11-08
国立文楽劇場「錦秋文楽公演」第2部で、「勧進帳」を観てきました。

私は、「勧進帳」はずっと歌舞伎で親しんできました。
初めて生で歌舞伎を見たのは1982年の京都・南座の顔見世興行で、
九代目を襲名した幸四郎が披露狂言の「勧進帳」で弁慶を務めました。
以来、弁慶でいえば幸四郎、吉衛右門、十二代目団十郎、五代目富十郎、
十五代目仁左衛門(孝夫時代も)、八代目中村芝翫(橋之助時代)、
十一代目海老蔵、二代目辰之助で、「勧進帳」の舞台を見ました。

先年、大阪天満宮の古本市で求めた往年の名優たちのブロマイド。

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文楽では30年くらい前?にテレビのスタジオ中継を見たくらいで、
実演に触れるのは今回が初めて。

「勧進帳」は歴史的には「歌舞伎十八番の内」として先に成立し、
近代(1895年)になって文楽に移されたわけですが、
単に歌舞伎の台本を使って文楽で上演するということではなく、
人形浄瑠璃ならではの舞台・工夫やなあと感じ入ってしまいました。
(昔、テレビで見たときは花道はないし、全体として面白くなかった)

舞台面は歌舞伎の場合はずっと松羽目ですが、
文楽では義経主従が関を越えたあとは大道具が浜に替わります。

芝居の流れや段取りは歌舞伎も文楽も大きくは変わりませんが、
いくつか違いがあります。

勧進帳の読み上げの場面で、富樫が巻物を覗こうとする場面、
歌舞伎では弁慶が「それつらつらおもんみれば」と言ったあとで
富樫に気付いて2人が極まる。
文楽では、「おもんみれば」を過ぎて、
弁慶が本文をしばらく読んでから、富樫が覗こうとする。

歌舞伎では山伏問答のあと、富樫が寄進しますが、
文楽では勧進帳の読み上げが済むと寄進、
その布施物を前に問答が繰り広げられます。
文楽の問答では弁慶が澱みなく答えるたびに、
富樫(咲甫太夫)が「ムムムム…」と悔しがる?のが印象的。

続いて、富樫が強力(義経)を呼び止め、
弁慶が「早く通れ」と金剛杖で打つ。

歌舞伎では富樫・番卒、弁慶・四天王が
上手・下手に分かれてにらみ合い、詰め寄る舞踊な見せ場がありますが、
文楽ではありません。

(一緒に見物したうちの奥様、
 「大ぜいすぎて舞台がごちゃごちゃするからでは?」と説を立ててました

ただ、弁慶が義経を打つとき、
歌舞伎では義経の傘をちょっと撫でる程度ですが、
文楽では、まさに渾身の力を込めて激しく打つ動きがが、すごい。

今回の錦秋公演では弁慶の引っ込みは花道を使い、
人形遣いは3人とも出遣いとなる華やかさ。
歌舞伎では本当に飛び去るような感じですが、
揚幕に入るまで、たっぷり、じっくり飛び六法を見せます。
(花道に近い2等席で見たので、堪能できました)

歌舞伎では花道の七三で弁慶が足を踏み、金剛杖を突くのが柝の頭、
富樫は見送り、幕が引かれます。
文楽では富樫はさっさと上手に消えてしまいます。

一番印象的だったのは、富樫の言動。

歌舞伎では番卒が「強力は義経では」と告げるのを聞いて、
富樫が「いかにそれなる強力、止まれとこそ」と呼び止める。
弁慶が「なんで止めるのか」とただすと、
富樫の説明は

「人に似たると申す者の候ほどに」

つまり、止めた理由は

「強力が義経に似ているという者がいるから」

というもの。

詰め寄りのあと、弁慶が「まだ疑うなら打ち殺す」「なぜ疑った」と迫ると、
富樫は「士卒の者が我への訴え」「番卒どもがよしなき僻目より」と言い訳する。

全部、番卒に責任をかぶせているわけです(笑
こういうのって、汚職が発覚して「秘書がやりました」という代議士みたい。

文楽では、富樫が決然と「強力待て」と呼び止め、
自ら「義経殿に似たるゆゑに止め申す」ときっぱりしています。
さらに通す段になって、疑ったのは「我らの不明」と、
関所側の責任を代表して述べる。

「勧進帳」が名作なのは、
義経一行が関を超えられるかどうかに焦点があるから。
さらに、家来の身でありながら主人を打つ弁慶に免じて、
富樫は「強力=義経」と知った上で、なお関所を通す。
そのことを弁慶も無言のうちに了解している…

「勧進帳」というドラマの核心が、
文楽ならではの形で伝わってくるように感じました。


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こにし すすむ

Author:こにし すすむ


京都・西陣生まれ。大阪の「勤め人はもにか吹き」です。

木綿を中心に、普段のきもの暮らしを楽しんでいます。

▼2005
FIH JAPAN第25回コンテストブルース部門1位
▼2006~
デュオ「こにしんぼ」などで神出鬼没。「出前はもにか」などで活動中

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