大阪大空襲と上方歌舞伎の役者さん

 2014-03-13
私にとって初の歌舞伎見物は、高校2年生だった1982年12月、
南座の顔見世(九代目幸四郎襲名披露)でした。
京阪電車が、まだ鴨川沿いに地上を走っていた時代です。

前売り当日の早朝から南座前に並んでいたら、
私の近くで高齢の方たちが芝居談義。
「初代の鴈治郎はんが…」
「私は梅玉さん(三代目)、好きやった」
といったやりとりです。

初代中村鴈治郎は1935年没。
1934年の舞台を仮に15歳で見はった人でも、
1982年には63歳です。

東京だけではなく、上方・関西の歌舞伎が厳然と存在していた、
その時代の名優の芸に触れた人々が観劇層に健在だったわけです。

会話の中で、

「やっぱり、カイシャはんでしたな」
「そうですな、シンコマヤはん。楽しませてもらいましたなあ」

というのがあって、駆け出し歌舞伎ファンの私は当時、
「カイシャて誰?」と思ったものでした。

中村魁車。1875年、大阪生まれ。
初代鴈治郎の門に入り、戦前・戦中の上方の歌舞伎を担った人、
立役から女形まで幅広い芸域。

最近、古書店で入手した1943年(昭和18年)の、
大阪・千日前の歌舞伎座の番付にも出ています。

同年6月興行では「熊谷陣屋」の義経、
同年10月興行では「色彩間苅豆」の、かさねを演じてはります。


番付1


番付2




魁車さんは、いまからちょうど69年前、
1945年3月13日深夜から14未明の第1次大阪大空襲で、
防空壕で亡くなりました。


初めて歌舞伎を観てから、手当たり次第に歌舞伎の勉強をして、
魁車さんの戦災死のことを知り、

「防空壕で亡くなられたとは、なんと痛ましい…」


と思って、歳月が経ちました。


でも、最近、先の記事でも書きました、

『検証 防空法―空襲下で禁じられた避難』
(水島朝穂・大前治著 法律文化社 2014年2月10日初版1刷)を読んで、

「防空壕」とは決して、
国民の生命を空襲から守るものではなかったと認識を新たにしました。


そこで死ななければならなかった「防空壕」って、一体、何なんやと。


魁車さんについてはブロマイドや舞台写真、
当時、舞台を見た方の覚書以外に、その芸を伝えるものは残されていません。

その死から69年。

1943年の番付の役者連名に、
「中村魁車」という名優がいた証(あかし)を見出す私です。


この番付については、別途また書きます。



コメント
>アドさん

貴重な証言、ありがとうございます。

つなぐ命の尊さを思います。

【2014/03/29 22:41】 | こにし #- | [edit]
私の祖父と叔母は昭和20年6月1日の空襲で防空壕の中で焼夷弾を受けて亡くなったそうです。
以前に日本髪で写真を載せさせて頂いた女性(私の祖母)の旦那さんです。
母親はその時、20歳。
残った、祖母、母、妹と女ばかりで(兄2人は戦死)で戦後を生き抜いてきました。
【2014/03/20 07:33】 | アド #- | [edit]
>kaoruさん

コメントいただきながら、
返信が遅れまして、すいませんです。

貴重な体験談をありがとうございます。

神戸の空襲、映画の「少年H」でも描かれていましたね。

本文でも触れています「防空法」の本には、
当時の日本政府の方針として、

「防空壕は簡素に造れ」

といった命令が下されていたことが生々しく分かります。

まともな感覚を持った方なら、
周囲の目(隣組)に背いてでも、

「防空壕には行くな」

と、とっさに判断されたことでしょう。

焼夷弾に焼かれた木造家屋の焔を、
「バケツリレー」で消せるはずもなく。

(ドラマ「ごちそうさん」の悠太郎が消火訓練で「逃げなさい」と指導したように)


国民の命を、命とも思わなかった時代の再来は、
なんとしても食い止めたいものです。



【2014/03/19 22:29】 | こにし すすむ #- | [edit]
久しぶりにお便りいたします。ここのところ、ますます忙しうしておりまして、ご無沙汰しています。うちの祖母たちも、神戸で大空襲にあいまして、祖父の教えで防空壕に入ったらあかんと言われ、焼夷弾の雨の中を逃げ惑って何とか生き延びて自宅の場所に帰宅したら、お隣さんたちは防空壕の中で蒸し焼きになってはったそうです。祖父の慧眼のおかげで、叔父も叔母も生き延びまして今日に至っておりますが、1900年生まれだった祖母は、その話と、憲兵に闇米を電車の中でとられた話を食事のたびにしておりました。どこぞのええとこのお坊ちゃまの政治家に、祖母の怨念のこもった話を聞かせてやりたいものでございます。
【2014/03/15 14:18】 | kaoru #- | [edit]












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プロフィール

こにし すすむ

Author:こにし すすむ


京都・西陣生まれ。大阪の「勤め人はもにか吹き」です。

木綿を中心に、普段のきもの暮らしを楽しんでいます。

▼2005
FIH JAPAN第25回コンテストブルース部門1位
▼2006~
デュオ「こにしんぼ」などで神出鬼没。「出前はもにか」などで活動中

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